宇宙の話で言うなら、あまりに大きな星は最期を迎える時、超新星爆発を起こしブラックホールが生まれる。
死に際の爆発的な輝きは銀河を越える勢いで、その後は生前に輪をかけた引力で世界に影響を与え続ける。
ぼくが目になるよ。
小さな1匹の魚の物語を伝えた日本語が、私たちの胸のうちに静々と堆積している。
彼の放った日本語は、何十年の時を超えてなお、輝きながら私たちのうえに降り注いでいる。私たちは傘をもって雨から身を遮れても、光から遮ることは出来ない。
私たちはきっと、スイミーの子供たち。
勇気を持って立ち上がること。言葉をかけて、輪を作ること。仲間と力を合わせて、強大なものへ立ち向かうこと。
様々な反発を日々抱え生きているけれど、不意に学校で習った物語が思い出される時、その物語が教えることに胸をうたれることがある。
彼は、そういう日本語を放った人。
私たちはこれから未来、彼の日本語に影響を受けずには生きていくことが出来ないだろう。
ブラックホールの様な引力で、燦々と降り注ぐ光の様な輝きで、彼の日本語は私たちを捉え続ける。